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harumama 2002年作






ねえ、ベジータ・・・その傷は自ら望んだものなの?

    アタシには分かる。
    アンタが傷ついているのは身体だけじゃない。
    その心はもっと傷ついているって・・・
    身体から出た血はやがて傷の治りと共に止まるわ。
    でも、心からでた血は止められない。
    自分で止めようとしてもその傷口は広がるばかりね・・・
    いいわ、アタシが止めてあげる。
    もしアンタがそれを望むなら・・・


  某月某日

「ちっくしょー!!カカロットの奴、頭にくるぜ!
 この上級戦士であるベジータ様を出し抜きやがって!!」

口に出した言葉以上の心の慟哭。
今や悟空との力の差は歴然としていた。
目の前で超サイヤ人としての力を見せつけられ、
しかも瞬間移動という特殊能力さえも身につけた悟空の存在は、
ベジータのプライドを打ち砕くのに充分すぎた。

こんな筈ではなかった。
伝説の超サイヤ人になれる者・・・それはサイヤの王子である自分しかいない。
そうずっと信じてきた。
その唯我独尊のプライドだけが今までのベジータを支えてきた。
どんなに虐げられても。
王子である自分だけが伝説の超戦士になれるのだという思いだけを心に秘め、
今日まで生きてきた。

敵も味方も彼にとっては同じ。
決して分かり合える存在ではなかった。
信じられるのは己の力のみ。
孤独の中で生きてきたベジータにとって、心の拠り所はただ一つ・・・
自分を信じること。

だが、それは今日完全に否定された。
伝説の超サイヤ人になれるのは自分ではない。・・・いや、自分だけではなかったのだ。

下級戦士である筈の悟空がそれになれたと知った時、ベジータの中で何かが壊れた。
確固たる自分への自信。
それと同時に沸き上がる嫉妬心。
これほどまでに他者に対し、嫉妬心を抱いたことはあっただろうか?
嫉妬するということはその者に対して、自分と同等と見なすことである。

見下すことはあっても同等に感じることはなかった。これまでの相手とは。
だが、今回ばかりは違う。
明らかに嫉妬心なのだ。

認めたくはないが、オレは奴に嫉妬している。
だが、それもほんの僅かな間だけだ。
今にオレは貴様を越えてやる!
このオレがこえられぬはずがない。
カカロット・・・
今度は貴様がこのオレに煮え湯を飲まされる番だ。

ブリーフ博士に重力の変移可能な装置を作らせ、
来る日も来る日もまるで狂ったかのようにトレーニングに打ち込む。
だが、時は無情に過ぎ去るばかりで、一向に変化の兆しは見られない。


  12月1日
 
頃はもう12月。
外気の冷たさは、吐く息を真綿のように白く変えた。
冷たく凍った空気の一粒一粒が感覚の消えかけた頬に突き刺さる。
外気の冷たさとは裏腹に、街は徐々に色めき立ち、
店の先々にはクリスマスに向けてのツリーが飾られ出した。
目映いばかりにライトアップされた街路樹たち。
夜でも明るく輝くその光の洪水の中を恋人たちは二人で暖め合うように寄り添い、
その中へと消えて行く。

もともとこういった騒ぎは性に合わない。
C.CO.でもお祭り好きなブルマが庭の至る所にイルミネーションを付け、
特注品という巨大なツリーさえも飾られた。
家の中にいても色と光の洪水・・・そして、それは外に出ても同じこと。

そんな街の喧噪から逃れるようにベジータは一人荒れた高地を目指していた。

辿り着いた辺境の地。
ここは月明かりの他、よけいな光は一切無い。
明るい筈の街の光は冷たく感じ、このわずかばかりの月光を暖かいと感じるのは何故だろう。

人工的な光は人を選ぶが、自然光は違う。
暖かく感じるのはそんなせいだろう。

ベジータは手頃な岩を見つけては宙に投げ、それを全身で受け止める。
投げては受け止め、砕くことの繰り返し。
まるで自らを傷つけるかのように・・・

ベジータには一つの考えがあった。
サイヤ人の特性として死の淵から蘇った時、その者は傷つく前よりも力が数倍増す。
自分も、あるいは瀕死の状態になることでより超サイヤ人に近づけるのでないだろうか・・・
これは危険な賭である。
だが、その一歩間違えば命を落とすことも省みず、ただ少しでも超サイヤ人に近づくためにと
ベジータは身体を傷つけ続けた。
しかし、何か躊躇いがあるのだろうか?
傷はつくものの致命的な結果にはなり得ない。

 オレはやはり死を恐れているのか?
 確かに、こんなことで死ぬのは俺にとって不本意だ。
 だが、その死に際にまでいかなければオレの中の超サイヤ人は目覚めぬ。
 このオレの中にもまだ甘さが残っているのか・・・

傷を負った身体で帰路に着く。
疎ましく思っていても今のベジータにとって帰るべき所はC.CO.しかなかった。
そこにいれば最低限以上の食料と雨風は凌げる。

 オレは超サイヤ人になるためにこの家の連中を利用してやるのだ。
 そう、あの女・・・ブルマも。

ベジータはそう自分がC.CO.へと帰ることを理由付けることで、
目的のためには手段を選ばないサイヤの戦士としてのプライドを保持し続けていた。

C.CO.へ帰ると、ベジータはまっすぐに自分の部屋へと向かった。
その途中で通るブルマの部屋。
中を覗かなくとも中で何が営まれているのかは容易に想像がつく。
二つの気の乱れ。
顔をしかめながらベジータは部屋へと足を早めた。
明日からもまた変わらぬ修行の日々が続く。
自分を傷つけるだけの・・・

  12月24日

リビングに飾られたアドベントカレンダー。
クリスマスまでの毎日を楽しむためのそのカレンダーは1日から24日まで。
開かれていない窓は今日の分のあと一つとなった。

こんな子供じみた物を楽しんでいるのはおそらくブルマの母親だろう。
西の都で美味しいと評判のタッフィー洋菓子店。
そのカレンダーはその店特製のもので毎日少しずつその店自慢の菓子が楽しめた。
ケーキなどの甘いもの好きの彼女らしい。
毎日カレンダーの窓を開けるごとに出てくるチョコレートバーやボンボンを嬉しそうに手に取り、
まるで少女のように顔をほころばせては家の者達にすすめた。
だが、そんな彼女につき合って一緒に菓子をほおばるのはヤムチャぐらいしかいなかった。
娘のブルマは、アメよりアタシはタバコよ!といい、ブリーフ博士も甘ったるいチョコレートバー
までは口にしてくれなかった。
ベジータに関しては問題外。
初めからそんなアドベントカレンダーなんていう戯れ言には見向きさえしなかった。

唯一の理解者であるヤムチャ・・・だが昨日、何度目かのブルマとの喧嘩により
再びこの家を出ていったばかりだった。

「あらあら、ヤムチャちゃんったら、またいなくなちゃったのね。
 せっかく今日もお菓子一緒に食べようと思っていたのに。
 さあ、今日は何が入っているのかしら♪」

そう言いながら、24と書かれた扉を開け、中に入っている物をつまみ出す。

「あらー美味しそうなクッキーだこと。
 ねえ、ブルマさんどう?」

「もう、母さんったら。アタシはいらないってば。
 それよりベジータどこに行ったか知らない?」

「ベジータちゃんなら昨日からまたどこかにトレーニングに出かけたわよ。
 たくさん食べ物欲しいって持っていったから、暫く戻らないんじゃないかしら?」

「・・・そう、せっかくのイブの夜だし、今夜ぐらいはアタシにつき合わせようと思っていたのに。
 いいわ、いる場所はだいたい分かっているんだから。
 前にも食料を届けたあの場所ね。ちょっと陣中見舞いにでも一手やろうかしら!
 母さん、ちょっと行って来るわね。」

ブルマは母にそう告げると、おそらくベジータがいるであろう荒野を目指した。
ヤムチャがいない寂しさを紛らわすのでは無い。
ただ今日は一人ではいたくはなかった。
ヤムチャとの喧嘩の原因・・・
ブルマはヤムチャが最近自分に対して冷たいのではないかと訴えた。
むしろ避けているようだと。
彼に言わせてみればそれはブルマが
ベジータに対して気のあるそぶりをしているからだというのだ。
そのことはなんとなく自分でも気づき始めていた。
自分の身体はヤムチャの中にありながらも心は別のところに・・・

今日は自分の気持ちを確かめるためにもベジータに会いたかった。
どうやって確かめるのかはわからない。
ただ、彼に会いさえすれば何かが変わる気がした。






風を遮る物が何もなく、肌を突き刺すような冷気が痛い。
ただただ広く荒れ果てた場所。
案の定、ベジータはそこにいた。
体中傷だらけになりながら倒れ伏している。

 ・・・やだ、まさか・・・死んじゃったの?

おそるおそる近づくと、気を使い果たし倒れているだけで命に別状はなかった。
ブルマは急いでカプセルハウスを取り出し、そこに設置する。
ベジータを中に運び入れベッドに横たえる。
だが、何時間そこにいたのだろう?
こんな寒空にいたせいかすっかり身体が冷え切っている。

なんの躊躇いもなかった。
ブルマは着ている物を脱ぐと、
ベジータの身体の傷から流れる血を拭いながら暖める。
その傷一つ一つを指でなぞりながら・・・
普段は戦闘服で身を包んでいるために気づかなかった。
身体には無数の傷跡。
再生能力の強いサイヤ人の彼が昔の傷を持っている筈がない。
だとしたら、これはここ最近の無理なトレーニングで
自らを傷つけたために出来たものだろう。
その傷の持つ切なさに思わず頬にこぼれ落ちる涙・・・

どうしてこんなにも自分を傷つけるの?
そんなにまでして強くなりたい?
それ以上に心は傷ついているのに・・・

漸く気が付くベジータ。
だが、自分の置かれた状況がいまいち飲み込めない。
何故か服を脱がされ、なぜか女が泣いている・・・

思わず視線を外しながら問う。
「・・・オマエは何をしているんだ・・・」

だが、ブルマが自分の傷に手をやりながら泣いているのを見て、全てを悟る。






  12月25日

「ねえ、ベジータ。もうイブも終わった頃かしら?」

「クリスマスか・・・」

「そう、今頃はサンタさん大忙しね!」

「おまえはそんなもの信じているのか?」

「そうよ!アタシ、クリスマスって大好き。
 でも神様ってデンデだっけ・・・」

思わず二人のあいだに笑みがこぼれた。




「クリスマスプレゼント何が・・・」

言いかけて、急に暖かい胸に抱き寄せられる。

    
      そう・・・アンタがそう望むなら・・・
      アタシから・・・Present for you!











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2008.02.25 Mon l 未分類 l COM(0) TB(0) l top ▲

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